設置の趣旨

世界で最も早いスピードで、超高齢社会を迎える日本では、医療・介護の問題は、今後さらに深刻となると考えられています。そのため、資源や労働力の量に依存せずに、科学技術に基づいて新たな価値を生み出すイノベーションの創出が、国としての重要課題であり、これを担う優れた人材が必要とされています。人々が心身ともに健康で、豊かさや生きていることの充実感を享受できる社会を実現するため、ライフサイエンス分野でイノベーションを創出していくことが求められています。

 一方で、これまでの日本の大学院教育では、学生は各専攻の専門分野の中で体系化された学問を学び、修士・博士の学位論文を取りまとめるプロセスを通じて論理的思考や分析・評価の方法論を習得してきました。しかしながら、科学技術が高度化する中で細分化を続けてきた各学問領域では、その領域独自のメソッドが発達するとともに、他領域でのそのメソッドの共有・活用が図られていない例も少なくありません。これに対し、ライフサイエンス分野は理学から農学、工学、医学にわたる広範な学問領域によって構成されているため、分野間で共通性の高い教育を受けた人材が企業や研究所などにおいて必要とされています。

 このような背景から、筑波大学は、日本において先駆的取り組みとして、欧米社会では一般的である学位プログラム(ディグリープログラム)を開発して、そこに向かって全ての教育プログラムを収斂させていく構想を進めてきました。既存の大学院システムを改革して、真に社会で必要とされる科学技術イノベーションを推進する人材を育成するためには、産学官が協働し、人材育成の場を構築することが必要です。これは、大学による単独の教育プログラムの編成では不可能であり、民間企業や国立研究所などが参加・参画し、自らが必要と考える人材を大学と協働して育成していくシステムを構築することが必要とされています。

 このような要請に応えるため、筑波大学では、つくばライフサイエンス推進協議会と協働した新しい学位プログラム「ライフイノベーション学位プログラム」を設置しました。